共同体

共同体

ひびき、重なり合う、幻視行。

もうすぐ、十年。
放心の浜辺と、
狷介な山の小道が
きまぐれで
仲良く
たたずみ
わけもないのに
私に
立ち止まって、間隙をくれる。
風の滑降を知り
雨の落涙に覚醒し
陽光を嚥下する。
海辺の山里。喧噪もすぐ近くにある。
歴史の香り漂う有名な観光地でもあるからだ。
谷地の小道に
誘われて
ほろほろ行くと
前方から見知らぬ人。
微かな息使いを包み込むように、
こんにちわ、
とその人が言い、
すれ違う。
同じ時間が生まれ、
瞬時、
容姿は、
スッと、また消える。